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「男」と「女」の違いを分けることができない理由を養老孟司さんに教えてもらった話

2023年12月13日

この記事は、ネットビジネスとは無縁の話です。

無縁ではありますが、当ブログのモットーでもある
『気づき』というものが人の成長、飛躍に多いに影響すると考えており、
その意味ではめちゃめちゃ関係深い話となります。

養老孟司さんが教える「モノの見方」

ここでお話する内容は、東大名誉教授にして著名な解剖学者である
養老孟司(ようろうたけし)さんの以下の著書(講演内容)から
”男と女”という奥深い永遠とも言えるテーマをもとにしております。

必読!
こう考えると、うまくいく。
こう考えると、うまくいく。

amzn.to

この本を読んで、さまざまな箇所で私は大きな『気づき』を得ました。
この記事では文庫本のP144~P155の10ページ足らずを主題にしていますが、
ここがとにかく衝撃的に面白かったのでご紹介することにしました。

その前に、この文庫本は養老孟司さんの講演録であってもともと、
2001年に「脳と自然と日本」という白水社の単行本があり、それが
2018年に「ヒトはなぜ、ゴキブリを嫌うのか?~脳化社会の生き方」扶桑社の新書になり、
2023年に「こう考えると、うまくいく。~脳化社会の歩き方」扶桑社文庫と改題され
長く評価されて親しまれてきた書籍です。

養老先生は「モノの見方」を説き、説くのはそのもの自体ではないと明言しています。

ここで話題にしたいことは、養老先生の説く
男か女かわからない人は、自然にできてしまう
ということです。

LGBTについては、私自身は偏見も全く無いと自覚していますが
それはあくまでさまざまな多様性を受け入れるという心情であって、
そこに合理的な理屈を伴う意識は正直なところ私の中にはありませんでした。

ただこの本を読んで、
なるほど~!
と明快に理解でき、またそれ自体が大きな気づきにもなりました。

さすがに解剖学者ならでは視点です。
本のタイトルでもある「こう考えると、うまくいく。」そのものでした。

講演「男と女という言葉ができたとき性の連続性が断ち切られた」

文庫本のP144~P155にある文章がとても明快で衝撃を受けました。

この文庫本前書きに、ジャニーズ問題に触れてありある意味、
これが結論でもあるので先に引用します。

性被害の問題らしいから、これは意識で作られた社会と身体性の相克である。
性はヒトの自然性の一つで、これを断固意識的にコントロールしようというのが現代なんだから、
「問題」が起こって当然
である。
男女平等の問題も同じで、セックスつまり自然としての性と、ジェンダーつまり社会的な性区分のおり合わせだから、「問題」が起こるに決まっている。

文庫本前書きより引用

養老先生は、「自然の中では男と女の違いを分けることはできない」と主張しています。

その要旨は以下のようなものです。

  • 男と女の違いを決めているのは「自然」である。
  • 本来自然の出来事というのはきれいに切れない。だから男と女の間もきれいに切ることができない。
  • 男とか女とかという言葉を使うと、自然のものが切れてしまう。しかし自然は連続していて切れ目はない。
  • 解剖では、胃とか腸とか、腸にも大腸、小腸、直腸などと名前を付けているが実際には切れ目のない一本の管
  • ではどうして切るのかというと、まさに名前をつけるから。名前をつけると私たちは言葉の世界に生きているからモノがきれいに切れて見える。

この話を聞いて、夢枕獏さんの小説陰陽師を思い出しました。
陰陽師の安倍晴明はモノに名前をつけることを「(しゅ)」と呼びました。
安倍晴明は、呪とは「ものの根本的なありようを決める言葉」であり、
「呪とは名であり、目に見えぬものさえ名という呪で縛ることができる」としています。

考えてみると、名前があるからこそそれはなにか?を私たちは意識できます。
名前が無いと、モワ~ッとしたままですね。
言語化がどれほど人間社会に意味を持っているかを痛感します。

男と女の違いを分けることはできない理由を図解してみた

ここは自分の理解のために、養老先生の文章から
こういうことかなと解釈を図にしてみました。

養老孟司「こう考えると、うまくいく」のP145-P146を図にしてみた by KENBO

この図を描きながらますますしっくりきました。

ここで図の補足となりますが、精巣(睾丸)と卵巣はもともと同じものだそうです。
養老先生でも『理由はわからないが』、発生のある時期になると精巣(睾丸)が
だんだんと下がってきて外に出てくるようになります。

ところが不思議なことに、哺乳類はみなそうかというとそうでもないのでビックリしました。
クジラや象は精巣は卵巣の位置にあるとのことです。
全部完全に下がっているのはヒトとかシカで、ネズミは途中まで下がっていると。

卵巣と精巣は本来同じ器官であって、まとめて性腺と呼んでいて
Y染色体が働くと精巣、働かないと卵巣だということです。

私たちは何段階も経て、男なのか女なのかを自覚していくようです。
ただ、養老先生の話はここで終わりません。

性に関して、短く言っても少なくとも四段階のことが含まれています。
しかもこの段階それぞれについて、どちらともいえないケースが出てしまう。
例えば、ターナー症候群といってXひとつしかないケース。この場合、外見上は女性になります。
あるいは、クラインフェルター症候群というXXYの染色体を持っているケース。
この場合外見は男です。
XYYというケースもある。睾丸性女性化症では、いったん精巣ができて男性ホルモンが出される。
ところがホルモンの受容体が遺伝的に異常を起こしており、ホルモンが働きません。
したがって、外見上は女性になります。
卵巣の位置に精巣がある。卵巣がないので原発性無月経となり、そのうち何割かの人は卵巣と子宮がありません。
Y染色体を持っていなければ、自然に女性になってしまう。さらに男性でも去勢すれば女性化します。

養老孟司「こう考えると、うまくいく」のP146-P147より一部引用


いかがでしょうか?
まさに、男か女かわからない人は、自然にできてしまう
ということが不思議でもなんでもないと私にはスッと腑に落ちてきました。

このように考えると、2023年11月30日に
ロシア最高裁が"LGBT活動を「過激派」認定"
したとニュースでもありましたが、これは自然というものを
冒涜しているんだなとあらためて思いました。