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山口周さんの「人生というプロジェクトの原理」に深く感銘受けた話(人生の経営戦略)

2025年3月30日

山口周さんは、元ボストン・コンサルティンググループなどで活躍されてきた
正真正銘のプロのコンサルタントです。
(現在はコンサルティング以外でも多数の分野で活躍されています)

私は約20年前、当時本業として勤めていた会社がアメリカの某社を買収(M&A)するかどうか、
その可能性と是非を調べて来いとの社命で一時期アメリカに渡って仕事をするチームに加わり、
それまで全く知識外であった本場のコンサルに出会いました。

現地で2つのコンサルティングファームと仕事をすることになり、ボストン・コンサルティングも
そのひとつでしたが、とにかく何もかも新鮮且つ圧倒されました。

日本国内での議論のレベルとまるで違い、つまり思考形態がまるっきり違うのです。
ハッキリ言うと、日本勢は幼稚園レベルで相手は大学の教授くらいに嚙み合わないのです。

ネットではよく聞く「コンサルします」は単に「そのことに少し詳しい」
だけのものですが、特に外資コンサルはほとんどの人が知らない全く異次元なものです。

外資コンサルでは職業的に厳しい教育と訓練を受けながらも、
実践を通じ残る人と脱落する人がはっきりしている業界です。

あるコンサルタントから言われたのですが残る人といっても、
何年もずっとそのコンサルファームにいる人は少ないそうで
優秀な人から抜けていき独立したりするそうです。

残っていること自体、ある意味落ちこぼれなのだと聞いて
こういうちょっとした言葉も当時の私にはグサッと突き刺さりました。

彼らの仕事の本質は、顧客の相談をもとに
立場の異なる人に意思決定をしてもらう
ことを実現するというものです。

よく耳にしたのは、我々の仕事(=コンサルタントの仕事)は、
状況を抽象化し、戦略を具体化すること
というメッセージであり、今でもはっきり覚えているほど衝撃的でした。

状況を抽象化?
ってほとんどの方がなにそれ?と思うはずです。

しかし仮にも「コンサルをします」という売り文句でビジネスしているならば
この意味すらわからないようでは絶望的です。

プロのコンサルタントは、いかなる現実の事象もありのまま見て、その裏付け調査を行い、
「これはいったいどういう問題と考えるべきか」
の本質を知るために現実問題を俯瞰し、
何度も試行錯誤しつつ最適な抽象化に行き着きます。

抽象化することで問題の本質がなにかを浮かび上がらせ、
そこで見極めを行った後に、解決策を戦略として具体化する、
という流れで仕事をしているのを知りました。

さらに付け足すと解決策を戦略として具体化する基本アウトプット資料はスライド(パワポ)です。
伝えたいことをビジュアル化する最も効率の良いツールだからです。

しかも凄いのは自分の書きたいように書くのではなく、
意思決定をしてもらう誰かの立場や、思考形態、性格なども織り込んで
その誰かが「見たくなる」ものに仕上げる技に舌を巻きました。

私は今でもあの超プロたちの顔だけではなく、凄すぎる思考技術をどうしても
思い浮かべてしまうので、「コンサルします」をおこがましく感じて
自分の商品の中でも一度もこの言葉を使っておりません。

せいぜい、アドバイス、支援、伝授、サポート、お手伝いといったところです。
わたしにとって出会った外資コンサルの業務レベルは非常に高く、
一生超えることはできない壁だといまだに感じております。

超えられないしそれでよしと思っており、だけど近づくことは努力で可能であり、
一般の方向けにはそれだけでも十分以上に伝えられるものがあることもわかっています。

さて帰国後に何年もたって山口周さんのことを知り、最近2025年1月に出版された
「人生の経営戦略」で述べられている「人生というプロジェクトの原理」の話が
特に興味深く、またさすがだなぁ~ととにかく深く感銘して記事にした次第です。

人生の「パーパス」(目標)をどこに置くのか

「正しい戦略」は「正しい目標」があってこそ成り立つと言われます。
つまり「誤った目標」のもとでは戦略も誤ったものになり、最後は破綻が約束されています。

山口周さんは「人生というプロジェクトの長期目標」を次のように設定しました。

時間資本を適切に配分することで持続的なウェルビーイングの状態を築き上げ、
いつ余命宣告されても「自分らしい、いい人生だった」と思えるような人生を送る

山口周「人生の経営戦略」より引用

やや難しい言葉が出てきますので定義を明確にしましょう。

「時間資本」とありますが、これはなんでしょうか?
実は万人が平等にもっていて唯一自分のコントロール可能な”時間”のことです。
誰もが人生を通じて必ずもっている資源=時間です。

もう一つ、「持続的なウェルビーイングの状態を築く」とはなんでしょうか?
ウェルビーイングは「身体的、精神的、社会的に満たされている状態」を指す言葉です。
要するに、何もかもハッピーな状態であるという意味です。

ここで重要なのは、「持続的なウェルビーイング」という言葉です。

人生の最後にウェルビーイングになっていればよい、のではありません。
いつかウェルビーイングになるのではなく、いつもウェルビーイングであることが重要なのです。

なぜなら人は自分がいつ死ぬか?を知らないからです。
だから「いつか」でもなく「いつも」になるのです。

さて、昔からずっとよくある特にネットでの商売の売り文句に
手っ取り早くラクに稼げる
という話があり、こういうことを人生の目標に置いてる人もいます。

しかし、こんなことをいくら繰り返しても破綻するのがオチ
という理由も含めて解説していきます。

人生というプロジェクトの原理

さきほど時間資本について触れました。
私たちは人生において自由にコントロールできるものは唯一、時間しかありません。

お金も人のネットワークも自由になりません。

ではまず、結論からお伝えします。
私は次に示す「原理図」の意味を理解するにつけ、
当たってる!
とただただ深く頷くのみでした。

これまで様々な人生哲学に関する書物を読み、また人の話も聞いてきたつもりでしたが、
次の「人生というプロジェクトの原理」図ほど明快にわかりやすい内容はありませんでした。

突き詰めるとこうだ、というシンプルで説得力のある図に
さすがプロフェッショナルのコンサルタントだと痛感しました。

人生というプロジェクトの原理
人生というプロジェクトの原理図:山口周「人生の経営戦略」より引用し、KENBOがリライト

さてこの「人生というプロジェクトの原理」について補足します。
見慣れない言葉もあるかと思いますが、図の見方における注意点は次の2点です。

  • 左から右へ:出発点は左サイドの「時間資本」にあります。
  • 実線と破線:実線は直接的に影響を与え、破線は間接的にしか影響を与えません。

時間資本を別の資本に変えるゲーム

山口周さんは、さきほどの「人生というプロジェクトの原理」をこのように呼んでいます。

とにかく私たちが唯一自由にできる資本が時間なので、
それをどこに振り向けるのが効率的か?
という話になります。

図において実線と破線の意味を説明しましたが、ここで重要なのは
時間資本を最も効率よく働かせるために注力すべきは「人的資本」です。

つまり自分の知識、経験、スキルのことになります。
この人的資本が充実してこそ、次に社会資本が生み出され、
次にそれがほとんどの人が目標とする金融資本に変換されるという仕組みです。

時間資本を社会資本や金融資本に投下しても、
スキルも経験も乏しい、社会的信用もない人にお金は簡単に集まらない、

そういった意味でも
「手っ取り早くラクして稼げる」のは一度うまくいっても砂上の楼閣
としか言えません。だから飛びついてはダメなのです。

またスキルや資格を身に付けるとそれがお金に直結するのではないか?
と誤解している人が実は非常に多いです。

山口周さんの「人生の経営戦略」にも書かれていましたが、私も仕事柄まったくその通りと
頷いた点があるので強調しておきます。

私の「複業」のひとつで某企業での採用面接官を請け負っております。
「たくさんの取得資格に頑張りました!」
という声を応募者からよく聞くのですが、これはほぼなんの助けにもなりません。

この理由としては"人的資本は外から見えないから"です。
新卒学生の場合は全くあてになりませんが、中途採用時でも必要なスキル・経験と別に
資格はさらに役に立たず、むしり社会資本(例えば顧客ネットワーク等)を見て
その人がどういう活躍をしてくれそうかを判断します。

社会資本は人的資本によって増える

人的資本が充実してくると、これが高いレベルのアウトプットやパフォーマンスを生み出し、
その結果として「あの人に仕事を頼みたい」という評判、信用、ネットワークが生まれます。

社会資本を生み出すのは人的資本なのです。
時間資本をいくら直接投下してもほとんど無理ですね。
必要なスキルも経験も無く、人が認めるアウトプットを出せない人に
誰が仕事を頼むことがあるでしょうか?

これも「人生の経営戦略」に載っていて、私も同感なのが
異業種交流会が不毛であるという話題です。

異業種交流会はそもそもここでいう社会資本を充実させるための話。
しかしなかなかそうなりません。

なぜ?

人的資本に裏打ちされたパフォーマンスがあって、
それを認め合うような場で無いと社会資本を形成できないからです。

同業者間のほうがまだ可能性が高いものの、必要なのは人的資本です。
まったく違う業種間で「人脈を広げる」という怪しい言葉につられて
出かけていったところでほぼ何も成果は得られないのが現実でしょう。

名刺交換して終わり、という虚しい時間の使い方で終始するのが目に見えています。

社会資本が金融資本を生み出す

最後にもっとも関心が高い金融資本です。

金融資本を生み出すのは、評判・信用・ネットワークなどの社会資本であり、
人的資本は直接的には影響しない点に注意してください。

時間資本もいきなり金融資本に投下しても非常に効率が悪い。

会社員の例とYouTuberの例

「人生というプロジェクトの原理」に具体的な例をあてはめてみましょう。
こういうことじゃないかなぁ~と思いつくところを記入してみました。

まずはもっとも数が多いと思われる一般の「会社員」を想定してみます。

(人的資本)社内外でスキル、専門性、経験を積みながら、
(社会資本)顧客からも社内からも評価され、昇進・昇格しつつ人脈も広がり、
(金融資本)それが給与、ボーナス、退職金などへ反映される。

これってごく普通の考え方ですよね?
今の社会は原則こうなっているのでさほど違和感ないと思います。

なお社内派閥、えこひいき、上司が無能といったような要因は含めておらず
ごく一般的な大きな流れとして理解いただければ幸いです。

では、次にほぼ個人事業主でありネットで活躍するYouTuberを考えてみましょう。

YouTuberの典型的なチャネルを想定してみます。
(人的資本)個人で企画を立てる。動画撮影の対象が人やお店なんかでは当然撮影許可の交渉もあり、
撮影中の会話(コミュニケーション)もものすごく大切です。

撮影後もほぼすべてのケースで何らかの編集作業を経て、YouTubeへアップロード、
動画編集スキルはそこそこでも十分通じる世界です。

(社会資本)視聴者を意識した企画を一回立てて終わりではなく、一定のスパンで
どんどんアップしていくことが宿命でもあり、これがあって再生回数も伸び、評価の蓄積に繋がる。

(金融資本)再生回数に応じてYouTubeからの報酬が得られる。人気が出てくれば企業からの
オファーも個別に受けられる可能性もある。

というような感じでしょうか?

ここで会社員の場合も、YouTuberでも同じですが、社会資本である
評価・評判がプラスではなくマイナスになれば、いきなりそれが
収入(金融資本)へ影響するということです。

会社員にとってのリスクよりもYouTuberのリスクのほうが圧倒的に大きいと考えられます。

なぜならYouTuberは文字通り、YouTubeという単独の企業サービスの広告モデルの
なかで再生回数を競うものなので、サービスの停止や終了があれば直撃を受けるからです。

もっともそれまでに磨いた人的資本を武器にして、YouTubeに代わるサービスや
動画というコンテンツを扱う別ビジネスへ変えていけば、新たな道が広がるに違いありません。

いずれにしてもここで言いたかったことは、やっている仕事がなんであれ
「人生というプロジェクトの原理」に沿って誰もが活動していると言っておかしくなく、
やはり根本にある時間資本の使い方次第だよな~と思う次第です。

ここまでの話のポイントは、持続的なウェルビーイングを目標とするには、
時間資本を人的資本の充実に回し、
人的資本の充実により社会資本を増やし、
その結果として金融資本を生み出せる、
というよくよく考えると当たり前のようなことです。

誰もが持ち唯一コントロールできる時間資本を
無意味なものに奪われないために山口周さんはこう言っています。

「自分にとって本当に大事なもの」
「自分が本当に実現したいこと」
を意識して時間資本を配分をマネージするしかありません。

まさに至言だと思います。

激賞
人生の経営戦略
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PS

プロのコンサルタントは、ビジネスの場で誰かに意思決定をしてもらう、行動を起こさせる達人です。
私は過去に外資系コンサル2社、国内コンサル1社のコンサルタントからダメ出しを繰り返し
直伝を受けてきた「技術」を何とか使いまわしております。
プロのコンサルタントは例外なしに、考え方に多少の違いはあれどその「技術」に習熟しています。

この技術はスライド作成(パワポ作成)に関するものですが、私は今に至るも自ら
作成することはもちろん、企画・営業・人事・開発・工場・流通などの関係者に指導も続けております。

実はネット上ではコンテンツ販売者やアフィリエイターもこの技術はある意味必須と言えます。
誰かに何らかの行動を起こしてもらいたい人なら、一生使える必須技術となります。

これまでの国内・外資コンサル直伝の「技術」(メッセージを決めていく思考に始まりパワポ作成まで)を
私なりに本当に役立ったところを集中的に必要なものすべて体系化し、商品化を進めています。
一般の会社員はもちろん、スポンサーを得たい中小企業経営者や、個人向けまたは企業向けに
アプローチしたい個人事業主の方には非常に役立てるものと確信しています。
(2025年5月頃リリース予定)