2023年8月25日に発売されたある本を手に取って、
これは買うべきと即断し読んだところ、衝撃の大きさに打ちのめされました。
この本はいわば俳句とその解説で構成されていて、
そこだけ見ると、なんだ普通じゃないかと思われるかもしれませんが、
おそらく史上初じゃないかと思われる画期的な俳句本です。
ちなみに私は、俳句を詠むスキルも、読むスキルもありません。
たまに、ふと目にした俳句にごく稀に立ち止まってしまうことがある、
程度のそこらへんを歩いているごく普通の日本の親父でしかありません。
黛まどかさんという監修者がハンパではない凄さ
この本を買って、監修者に黛まどか(まゆずみ・まどか)とあっても、不勉強ながら
実はどういう方なのかこれまで全く存じ上げていませんでした。
2023年で61歳ということですが、以下にご紹介しているインタビュー記事を
ご覧になると正直とてもそうは思えないでしょう。
たまたまインタビュー記事を目にして驚きました。
大変な経歴をお持ちだけではなく、この本の出版に向けて
どれほどの努力をされたのか頭が下がる思いでした。
インタビュー記事は「前編」と「後編」があります。
前編には、そもそもこの本がどのように生まれたのかを含めて、
俳句が人生にどのような影響をもたらすかを語られています。
後編は、更年期障害などで苦労されたお話などを聞くにつれ、
男である私から見ても頭が下がる思いで役に立つ女性も多いかと想像します。
何はともあれ、この「前編」と「後編」を続けてお読みいただくことが
最も理解が深まると思いますので是非ご覧になってください。
どなたにもきっと役立つことが書かれています。
私自身は、俳句が実は自分自身を見る、
「内観」に通じるという箇所に
とても深く納得できる思いでした。
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ウクライナからの俳句に向き合った黛まどかさん(インタビュー/前編)
ウクライナ女性の句集が日本で発刊されることになり、注目を集めている。 まだ24歳、日本に住んだことのない彼女がなぜ俳句を作るの?
ourage.jp
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更年期に我慢しないで!と、61歳の黛まどかさん(インタビュー/後編)
『ウクライナ、地下壕から届いた俳句 ~The Wings of a Butterfly~』で翻訳・監修という大役を果たした、俳人の黛まどかさん。
ourage.jp
ウクライナ、地下壕から届いた俳句 The Wings of a Butterfly
1999年、ウクライナ・ハルキウ生まれの
ウラジスラバ・シモノバ (Vladislava Simonova)さんが俳句の詠み手です。
生まれ育ったハルキウでは、もともとロシア語が普段から使われていたそうです。
今はウクライナ語で生活をされているようです。
ハルキウという町もこの1年半で初めて知った名前ですが、戦時下にある状況での俳句集です。
つまり、この俳句集は連絡もおぼつかない中、
原文はロシア語で作られた俳句となっています。
えっ?
ロシア語でそもそも俳句が作れるのか?
と私も含めて多くの方が感じるはずです。
作れたとして、それで終わりではなく
この本の凄さはもっと別の点にもあると思うのです。
それは、日本語の俳句として
いかに訳しているのか
という点にあります。
黛さんご自身がインタビューでもお話されているように、
訳の出来次第で価値が決まるのは想像に難くありません。
普通に会話を日本語に訳すのと違って、五七五の
日本語の俳句として成立させるだけではなく、
その訳次第でどれほど原文の価値を伝えられるか左右されます。
先ほどのインタビュー記事を読んで私は、黛まどかさんが
本物のプロだな、と思ったことがあります。
それは黛まどかさんが主宰する「Haiku for Peace」プロジェクトのメンバー含め
12人の翻訳チームを作り、そこにウクライナ人やロシア人の協力も得て翻訳、全面監修して
この本を作り上げたというプロセスと努力です。
生かすも殺すも訳次第と心得ておられた黛さんは、自分の視点だけではなく
多くの視点を取りいれ、独りよがりにならないことを重視されていました。
日本人だけではないチームを作り、議論に議論を重ねて出来上がったのだと
これだけでも十分わかりますが、実際に訳された俳句で常ならぬ感動を覚えました。
今、多くの日本人がウクライナの出来事に無関心ではいられません。
この本では50句の厳選されたウラジスラバ・シモノバさんのロシア語俳句と
それを日本語で表現した俳句、そしてその解説が丁寧に心込めて綴ってあります。
Amazonのこちらのページにもいくつかの日本語になった俳句が紹介されています。
私にとっては・・・ここに紹介されている句を見て心にグサッと刺さるものがありました。
情景が浮かび、音が聞こえるかのように感じました。
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ウクライナ、地下壕から届いた俳句 The Wings of a Butterfly
amzn.to
ChatGPTが俳句苦手な理由
当ブログでも何度も話題にしている生成AI、特にChatGPTについて
「俳句」との関連で少し触れておきたいと思います。
ここで問うことは、
ChatGPTは俳句が読めるのか?
ということ。
何はともあれまずは問いかけてみます。
シンプルにまずはこう聞いてみました。
あなたは俳句の先生です。
以下の俳句を読んでどのような意味や情景が浮かぶかをできるだけ具体的に、わかりやすく答えてください。
地下壕に紙飛行機や子らの春
因みに、「あなたは俳句の先生です。」というのは
ChatGPTに役割(ROLE)を入れるという基本のプロンプトテクニックと呼ばれるものですが、
こういった使い方については別の場で詳しくお話するつもりです。
(そもそも、なぜこんなことをする必要があるのかからお話しないとわからないですよね?)
「地下壕に紙飛行機や子らの春」という句は、
ウラジスラバ・シモノバさん著の本の表紙に載っている句です。
回答のトーンはEmotional(エモーショナル)にという注文をつけてみました。
するとChatGPTはこう答えてきました。
まぁこれを読んで最初に感じたことは、
ウソこけ!コノヤロー!
というくらいのもので、プロンプトを改善すると実は
答えもどんどん変化するのですが、ここではそれが本意ではありません。
あなたはChatGPTの返事をどう感じましたか?
なんとなくわかっている風に答えているけど、
どこか違和感がある、と感じて欲しいものです。
その違和感を大切にしましょう。
それこそが人ならではの感覚だからです。
今私たちが目にしているChatGPTは大量の学習をして、
相当に鍛えられたアルゴリズムによって言葉を選び出す(=推論する)マシーンです。
ただとても苦手なことがあるのです。
それは・・・
以心伝心とか
行間を読むとか
空気を読む
といったようなものです。
俳句で言うならば、
余白を読む
とでも言えばよいでしょうか?
(俳句は無知に近いので間違っていたらごめんなさい)
五七五に書かれていないモノや景色や音などを
私たちは無意識に読み取ろうとします。
ChatGPTをはじめとするLLM(Large Language Model)には
それができません。
少なくとも今のところはできません。
(ただ将来いつの日か、テクノロジー進化によりできるようになる可能性も否定できません)
そういった意味で、俳句はとても人間らしい文学であり、
ChatGPTは今のところどう頑張っても真似できない領域のものだと考えます。
とまぁ、ここまで述べたことからもひとつだけ言っておきたいことは;
巷にChatGPT、もしくは類似の生成AIを使って
アウトプットをそのまま記事にすることで稼げます的な話は、
絶対と言って良いほど私はお勧めしません。
いかにそれらしく記事にできたところで、
しょせんはあなたの本心とは遠いところにあるまがいものなのです。
これはネット黎明期のアフィリエイトからよく使われてきた
ネット上の情報を単にコピペして記事量産し、検索上位に露出して
情弱な誰かをを騙すアプローチと似ています。
このことは反省を込めて話しています。
ネット黎明期に私自身も関わったアプローチであり、
相手のことを考えず、ただ売るためには何でもありのやり方です。
これはビジネスではありません。
そのような考え方は淘汰されます。
ChatGPTの本当の使い方はそこにあるのでない、
ということをご理解いただければ幸いです。