GAFA 悪者なのか
この記事は「インターネットがもたらすもの」
シリーズ第3話になります。
第1話:インターネットがもたらすもの(1)~テクノロジーの歴史を紐解く
第2話:インターネットがもたらすもの(2)~勝者総取りのルール
の続きとなっておりますので
良かったらそちらもご覧ください。
で、この第3話ではGoogleとSEO誕生あたりの経緯などを
詳しくご説明していますが、その関連で興味深いニュースを
発見しましたので前座としてその話から。。。
2019年3月16日(土)朝日新聞のオピニオン&フォーラムにて
「GAFA(ガーファ) 悪者なのか」というタイトルで語られた
元・米グーグル副社長の村上憲郎(むらかみのりお)さんの
コメントをご紹介します。
第3話の本論に関係する非常に興味深い箇所を
修正なしで引用します。
富の集中による不公平の存在は多くの人の指摘通りですが、
再分配をどうするかは難しい問題です。GAFAを生んだシリコンバレーでは高額所得者が集まった結果、
住居費が上がり過ぎ、普通の地元の人が住めなくなっています。米国の分厚い中間層も失われてきています。
これまでの資本主義とは様相を異にしています。(中略)
GAFAが最終的に提供しようとしているのは
『執事サービス』です。執事は主人のすべてを知り尽くし、冷蔵庫に好物を常備しておく。
アマゾンはいずれ『注文しなくても必要な時に必要な商品が届く』
サービスも可能になると公言している。そのためには全部見せる。
つまり個人データの開示しかありません。
いかがでしょうか?
巨大プラットフォーマーによる二極化と独占。
そして目指していることが明確に表現されています。
Web 1.0
第2話にて、ネットスケープ社の成功を述べました。
この時代、ネットスケープ社は転換期をもたらすインパクトを
もたらしたわけですがやっていることは
Webサイト上に広告を流すという極めてオーソドックスな
ビジネスモデルに徹していました。
1994年に登場したYahooを見てみましょう。
もともとウェブサイト探しのリンク集として登場したヤフーは
1998年最盛期に1日あたり1億PVというアクセスを集めました。
しかしヤフーのビジネスモデルはネットスケープ社のそれと
基本的な違いがありません。
ウェブサイト上で広告を表示したり、メールホスティングサービス
などの既存モデルを追及していたままでした。
このネットスケープ~その後のYahoo、エキサイトなど
ポータルサイトが勝者総取りを目指していたのがWeb1.0時代。
これを完全に覆したのがGoogleです。
とはいえ、まだGoogleは1996年時点ではまだ
大学内のプロジェクト名に過ぎません。
1996年、スタンダード大学の博士課程の2人、
ラリー・ペイジとセルゲイ・プリンは
ヤフーなどのポータルサイトがやっている
広告ビジネスに反感を持っていました。
もう少し具体的に言うと、CPM方式(Cost Per Mille コスト・パー・ミル)
で課金されるバナー広告などのビジネスを嫌っていたのです。
(※CPMとは、広告が1000回表示された時に、どのくらいの費用がかかるかという意味)
Web 2.0
ペイジとプリンが懸念していた技術的課題は
情報オーバーロードという問題です。
情報オーバーロードとは情報が多すぎて
必要な情報が埋もれてしまう現象のことです。
当時ウェブサイト数、ウェブページ数、
ハイパーリンク数の爆発的増大が彼らの研究の
要にありました。
因みによく話題として口にのぼりますが
Google(グーグル)はGoogol(グーゴル)のスペルを
プリンが間違ったために生まれたと言われてますね。
Googol(グーゴル)は数学の用語であり
1グーゴルは10の100乗のことです。
天文学的な数字を表したいという意味でしたが
スペルミスで登場した会社が今や誰でも知ってる
普遍的な名称となっているのは何とも不思議な感じです。
ペイジとプリンの考えは、
世界中のデジタル情報をGoogleで整理できないだろうか?
ということが出発点。
彼らがYahooなどのはるか先を行っていたのは
ウェブページにある内容の関連性と信頼性を判定する
ロジックを考えていたことです。
いわばハイパーリンクの観点から捉えていたのです。
あるウェブページの関連性について、
そこにリンクしているウェブページの数と質を
もとに判定するアルゴリズムでした。
彼らはそれをページランク(PageRank)と名付けました。
(※なお、PageRankは2016年に廃止されています。)
ページランク(PageRank)を競うために
さまざまなSEO(Search Engine Optimization)対策が
世界中であれやこれやと議論され、その対策自体が
商品化されてきたのはどなたもご存知でしょう。
プリンはそのネタを自らばらしています。
すなわち、Google検索エンジンは実に再帰的である
とロジックを説明しました。
ウェブの規模がどんどん拡大し、
ウェブページとリンクの数が増えれば増えるほど
ますます効率よくなるのがGoogle検索エンジンです。
ペイジとプリンが1940年代に生まれていたら
公益のためにウィーナーと同様に身を捧げていたかもしれません。
しかし彼らは1940年代のMITではなく
1990年代のスタンフォード大学にあって
インターネットがお金になることを知っていました。
Amazon創立者のジェフ・ベゾスなどから
資金を集め、1998年にGoogleは会社設立に至ったのです。
彼らが選んだのはYahooなどのオンライン広告モデルではありません。
それこそがGoogleをして圧倒的な優位な立場に
持ち上げたビジネスモデルでした。
これがWeb 2.0の時代の幕開けでした。
アドワーズとアドセンス
Googleのトップページはご存知のように
非常に素早く表示される極めてシンプルな検索窓のみ。
ここだけ見るとGoogleはどうやって利益を
得ているのかわかりませんね。
そこで収益化のモデルとして編み出したのが
まずアドワーズ広告です。
広告を出したい人のためのサービスであり、
Google検索の結果ページの右サイドに
検索されたキーワードに関連する広告を出すというものです。
アドワーズ広告の特徴は、ネット広告枠をセット価格で
提供するのではなく、独自のリアルタイムオークションシステムです。
アドワーズ広告と別にもうひとつ編み出したのが
アドセンス広告になります。
アドセンスはGoogle検索には無関係に
自分のウェブサイトに関連する広告を表示するサービスです。
その後Googleが破竹の勢いになったのは
アドワーズとアドセンスによるものです。
YouTubeの買収、Android(スマホOS)の開発、
Gmail、そして自動運転の取り組みまで
アドワーズとアドセンスによるビジネスモデルが
それを可能にしたのです。
Webというのは「分散型」構造ゆえに
無数の富が発生する点があるはずで
そういった経済が占めるだろうと
理想主義者は考えていましたが事実は逆でした。
Googleは分散型構造を利用することによって
独占的ネットワークになったのです。
ネットスケープ社に代表されるWeb 1.0では
いわゆるソフトウェアの使用許諾によって利益を得ていたのですが
Googleは全く違います。
ブラウザと検索エンジンと接続サービスの間の
随所に顔を出して、利用者とオンラインを繋ぐ
仲介者、支援者、サポーターのように機能します。
冒頭に村上憲郎さんが、GAFAの追及は
『執事サービス』であると言ったのは
まさしくこのことに他なりません。
今日のインターネットビジネスはGoogleのような
執事サービスに支配されている(そしてこれからも加速する)
と言って過言ではありません。
Web 2.0の時代のビジネスはGoogleを真似して
ツールやサービスを無料で提供して
広告などの販売により収益化を図っています。
Google検索エンジンの本質的な強さ
Google検索エンジンの隠れた特徴と言いますか
世界中で24時間稼働しているエンジンは
私たちが使えば使うほど力を増している
のをご存知でしょうか。
Google検索エンジンは使われるたびに
知識を高め、有用性を増していく仕組みになっています。
つまり利用者のあらゆる行動が信号とみなされ
解析されて、システムに還元される仕組みです。
プリンが再帰的と言ったそのものです。
このこと非常に重要なことなので少し
言葉を足してみようと思います。
私たちは、日々GAFAのために無償で働いている
と言ってもおかしくありません。
利用すればするほど精度が上がる
持ちつ持たれつというか、循環型で
発展するビジネスモデルがGAFAの特徴です。
GAFAのために無償で喜んで働きつつ
企業価値を高めるために
個人情報のデータ作りに励んでいるのが私たち。
よく考えてみてくださいね。
なんだか変じゃないか、と思うのが自然です。
しかしこれが現実であり、本シリーズ(1)
でも述べたように極めて強靭な(ROBUSTな)ビジネスモデルであり、
知らぬうちにそれをリアルタイムに貢献し
さらに強固なものにしているのが私たちです。
私たちは日々、朝から晩まで
自分の知りたいことを検索エンジンに求め
そこから知りたいことを得ていますが
同時に検索エンジンの性能、品質強化に
飽くことなくタダで貢献しているのです。
だからこそ、
人間の活動に関して最強の情報
を常時持っているのがGAFA。
ネットでビジネスをしているほとんどの
中小企業から個人事業主まで、どれだけ稼いでいるといったところで
この非情な仕組みの世界において
端っこのほうで活動しているに過ぎません。
(私ももちろん見えないほどの端っこにいると自覚しています)
ただその自覚があると、目の前に差し出される
情報にあまり惑わされなくなります。
より本質が何かを追い求めることが
重要だと気づきます。
その本質のひとつを教えてくれるのが
木坂健宣さんのネットビジネス大百科2かなと。
完全無料のワケも中身を知ると理解できます。
(無料オファーではない深い理由がわかります)
手にされている方は、木坂さんと同調する意見を
持つのもよし、異論を持つのもよしです。
本質を考える一助になることだけは保証できます。
そして何事も本質を考えて行動するほうが圧倒的に強い、
これも長年の企業経験から断言できます。