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AI時代はGAFAMから「マグニフィセント・セブン」へ~自動運転のルールとプログラムも人間不要に!?

2023年9月6日

2022年の11月以降、生成AIであるChatGPTの爆発的な人気に伴い
ディープラーニングで始まった第3次AIブームから今や、
第4次AIブームに突入しているのでは?という声も多く聞かれるようになりました。

そういった中、GAFAやGAFAMといったメジャーなプレイヤーの呼称が時代遅れになり、
『マグニフィセント・セブン』(Magnificent Seven)という言葉が広がりつつあるようです。

私はAI業界にどっぷり浸かっているせいか、この特に『セブン』として
GAFAMを5社として追加された2社の動向はとても気になるほうです。

この記事では、これらの動向について少し専門的な話も交えて
AI技術でずっと先を走っている人々が何を考えているかを、
私なりに解釈してお伝えしたいと思います。

マグニフィセント・セブンとは?

『マグニフィセント・セブン』はもともとは西部劇の映画タイトル名です。

個人的には、この映画そのもの、主人公含め登場人物含め
好き過ぎておそらく40回以上は観ています。
・・・この1年以内にも5回ほど観てます(笑)

私は吹替が苦手で、俳優の生の声が好きな字幕コダワリ派であり、映画館以外では
ほぼAmazonプライムビデオで購入のうえ繰り返し堪能しています。

この映画の原点は、黒澤明監督の時代劇「七人の侍」(1954)にあり、
舞台を日本から西部開拓時代のメキシコに置き換えたハリウッドリメイクした
ウエスタン「荒野の七人」(1960)をモチーフにし作られた2016年リリース映画です。

いわば「七人」の三作目にあたるのが『マグニフィセント・セブン』

主人公のデンゼル・ワシントン、ジュラシック・ワールドのクリス・プラット、
ハリウッドで活躍する韓国人気俳優イ・ビョンホン、ヒロイン役に抜てきされたヘイリー・ベネット
などなど有名な実力派俳優ばかりで、私史上ではこれを超えるものがないほどの最高の西部劇。

なぜ何度もリメイクされ続けるのか?
映画を観ればわかります。
映画としてのエンターテインメントのエッセンスが全部詰まっているからだと思います。

一言でいうと、
めちゃめちゃ面白い!

そう考えると、黒澤明という方がいかに優れた映画を作っていたのか、
世界の映画人がリスペクトする理由も必然的にわかります。

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ついでに、個人的にはこの映画(字幕版)の最後に流れる感謝のフレーズが
何とも多くの日本人にとっても共感できる内容を含んでおり、
いつも哀愁とともに心温まる何かを毎回感じています。

彼らが何者であったにせよ
最後に ここで ー

勇気と名誉と共に立ち上がり

戦えぬ人のために戦い

そして命を捧げた

彼らのものではない
”何か”のために・・・

彼らは ー

崇高なる男たち

『マグニフィセント・セブン』字幕版のエンディング部分に流れる

この感謝の言葉が映画のすべてを物語っています。
『七人の侍』のサムライに繋がる何かを意識せずとも共感できるものがきっとあると思います。

AI時代を切り拓く『マグニフィセント・セブン』

はい、ここからは映画ではなくリアルなビジネスの話です。

この話をするには、そもそもGAFA(またはGAFAM)が現代のテクノロジー発展に
どう関わってきたのかを理解いただくほうが深まるかと。

2019年に4つに分けて記事にしたものがありますので、
できればこちらもお目通しされるとこの後の話にスムーズに繋がると思います。

GAFAMは、Google、Apple、Meta(Facebook)、Amazon、Microsoftのことです。
マグニフィセント・セブンはここに有名な2社が加わった総称です。

その2社とは;

Tesla(テスラ)とNVIDIA(エヌビディア)のことです。

TeslaはX(twitter)、スペースX、スターリンクなど次々と
事業を拡大しているあのイーロン・マスクが運営する自動車メーカーですが
超有名ですので説明するまでもありませんね。

NVIDIA(エヌビディア)については、一般の方々にはあまり
知られていないかもしれませんが、今のAIブームで一気に躍り出た企業です。

私自身はその昔、ハードウェア技術者だった時代からNVIDIAともやりとりしてましたが、
ファブレス(製造工場をもたない)で、IPコア(intellectual property core)
つまり「知的財産コア」を設計し提供する超優秀な企業として知っていました。

モノを作るのは他社に、その代わりに設計してライセンス料をもらうというビジネスです。

今やAIでは必須のGPU(ゲーム用マシンでは欠かせない専用演算装置で知られています)
市場ではほぼ独走状態だと思います。
一般に「AIが何かをする」というのはクラウドの向こうにあるGPUマシンが
山ほど繋がっていて学習・推論していることを示します。

NVIDIAが『マグニフィセント・セブン』の仲間入りをしてるのも、
なんら不思議ではありません。

さて、ここからはTeslaのやっているすごいことについて、
もう一歩、技術面で深掘りしたお話したいと思います。

Teslaの恐るべし「完全自動運転」は未来を予見する

この話を聞きかじったのは、起業家でエンジニアでもある中島聡さんの
「エンジニアのための経営学講座」を中心としたゼミ形式のメルマガ内です。
(因みに有料です)

中島さんは、TeslaがFSD(Full Self Driving=完全自動運転)の最新バージョン(FSD12を発表し、
イーロン・マスクがX(twitter)で実況中継をしていた内容が非常に重要だということで
FSD12の解説をされました。

中島さんは、「V12はV11と違い、100%ニューラルネットワークで作られているそうです。」
との話をかみ砕いてくれましたが、これが実にすごいというか
遂にここまで来たか・・・という感じなのです。

どういうことかと言うと;

これまで自動運転では人間が作ったさまざまなルールやアルゴリズムに基づいていましたが、
V12からはその手のコードを排除して、すべてAIの学習に任せた
ということです。

ん?
これだけでは、なんのことかわからないですよね?

もう少し詳しく、中島さんのコメントを引用します。

従来型のソフトウェアであれば、

・車線とは何か。車線に従って走るべき。
・自転車とは何か。自転車には接触しないように避けるべき。
・信号とは何か。赤信号では止まらなければいけない。

などのルールを人間が定め、それに従って自動運転をするようにプログラムを作っていました。

しかし、V12からは、その手のコードをすべて排除し、人間が運転する自動車から撮影した映像を大量に学習データとしてニューラルネットワークに与え、そのデータから、ニューラルネットワーク自身が、「車線に従って走るべき」「自転車には接触しないように運転する」などのルールを見出し、実行するように作ってあるのです。

中島聡さんの「週刊Life is beautiful」より引用

ここまでで何を言っているかお分かりでしょうか?

要するに、自動運転のルールやプログラムをこれまでは人がゴリゴリと作っていたが、
TeslaのFSD12からはAI自身がルールを作り、それに沿ってプログラムを自ら作り車を走らせる、
という人間不在の状況になったということです。

Teslaという企業が、自動運転においては及びもつかないほど莫大な投資をしてきたのを
車関係で特に先行開発的なところで仕事をされているなら承知のはず。

実は自動運転のためのAI学習用データは、普通に車を走らせて得られるデータでは
必ずしも十分ではありません。

より賢くなるための学習に必要なデータはそう簡単に手に入らないのです。

で、どうするかというと例えば車を走らせて得られる生映像をもとに、
3Dモデル化(リアリティのあるゲーム空間のような感じ)しておいて、
その3Dモデルをベースにして学習用データを仮想的に作っていく方法もあります。

そういうことにとんでもない規模の投資を続けて今に至っていると思いますが、
実に恐るべし、Tesla。

こういったところがAIの先端でやっていることの一つです。

だんだんと人間のやるべき仕事とAIが肩代わりする仕事の
境界線があいまいになってきているのを実感しています。