佐々木俊尚

PinterestとNowThisからメディアの垂直統合化と最新のウェブトレンドを知ってコンテンツ戦略を考える【前編】

2015年2月28日

ピンタレスト

はじめに

この記事はやたら長いですが、その分とても時間をかけて書きました。
書いてる時間だけではなく、主にこの記事を書くための予備調査などの時間がです。
そして、長いけどもすべて関係しているお話となり【前編】、【後編】と分けております。

お読みくださっている方は、お手元にコーヒー、お茶や、お酒など
お好みの飲物を置いてごゆるりとお願いします。

またこの記事をお読みになっている方の大半が、
アフィリエイターさんだと想定して書いています。

ネットビジネスに限らず、リアルなビジネス(多くのケースで本業と呼ばれるもの)
でも全く同じだと思いますが、モノゴトはなにをどう見てどう認識しているかで
成果が大きく左右されると思いませんか?

この記事でご紹介している事実と考え方はそのようなもののひとつであり、
集客やコンテンツを考えるうえでお読みいただいている方の
新たな気づきのひとつになれば幸いです。

またこの記事は以下の記事続編ともいうべきものであり、
管理人KENBOのネットビジネスに対する世界観をご紹介した内容でもあります。

ネットの未来地図レポート│佐々木俊尚氏のキュレーションメルマガで気づき連鎖の爆発

人は見えている世界がどのくらいの範囲、深さによって、「気づき」の数も度合いも
それに比例するのではないかと常々考えております。

実生活でつくづく感じるのですが、気づきの数や度合が違うと、
行動やその結果として直接的に得られるもの(= お金、経験値、知識など)への
インパクトも全く違うものになってきます。

で、この記事を書いた動機が・・・
薄々とネットは今こうなってるんじゃなかろうか?
っとずっと思っていたところにジャーナリスト・作家の佐々木俊尚さんの話を聞いて
やっぱそうだよね!と思わず膝を打ったところに端を発しています。

SNSの垂直統合化が進んでいることを知る

垂直統合化

まずはここからお話していきます。

記事タイトルでのメディアとは、主にSNSを表しています。
垂直統合化というのは、早い話が囲い込み戦略のことです。

囲い込みというのは、そのSNSの中からユーザー(読者・見込み顧客)
を逃さない戦略のことです・・・といってもこれではピンときませんよね?

具体的な例として、まずFacebook(フェイスブック)
ここは自前の動画サービスを提供するようになりました。
従来であれば、と言いますか今でもごく普通にYoutubeへ動画投稿し、
その動画をFacebookでシェアするというやり方が一般的だろうと思います。

ところが今やフェイスブックでは専用の埋め込み動画をシェアする形のほうが、
フォロワー画面に表示されやすいといった形に変化しています。

Youtube動画をフェイスブック上でシェアすると、Youtube画面から
別のYoutubeチャンネルや別のYoutube動画へ読者の移動が普通に起こります。

つまり一旦、フェイスブックというプラットフォームから
外の世界へ飛んでいくわけです。
飛んで行って戻って来てくれれば良いのですが、一旦離れると
読者は気ままにその時の気分次第でどこかに行ったままとなってしまいます。

これって、メディア(プラットフォーム)間の水平移動をしているようなものです。
片道で行ったきりになってしまうことの多い水平移動です。
垂直統合に対して、これは水平分散であると言えます。
別のプラットフォームへ移動し、散らばっていくという感じですね。

これに対して、自前の動画サービスを利用するとフェイスブックから
外部に一切出ることなく、すべてそこだけで完結できるという仕掛けです。
これを垂直統合化と呼んでいます。

こういった仕掛けは、昨今のモバイル進歩と利用拡大によって
多くのSNSが重視するようになってきました。

一度外部の世界に出るということは、クリックがその前に発生し
そしてクリックする数が多いほど、離脱率や購入率といったものが落ちるのは
昔からよく知られてきたことです。

昔、ガラケーブーム時代は特に極端だったと経験上感じています。
小さい画面で且つレスポンスも遅いので、画面遷移が起こるたびに読者は離脱していきます。
1クリック多いだけで、階段状に離脱率が大きくなっていたことを思い出しました。

今SNSを中心に進んでいる垂直統合化とは、要するに一度、訪れてきた読者は
自分のプラットフォームからできるだけ逃したくないという戦略が
スマホ時代になり、より強調、強化されてきているのです。

インタレストグラフとソーシャルグラフが混じり合う

インタレストグラフ

もう少し、ややこしそうな話が続きますがご容赦ください。

インタレストグラフとかソーシャルグラフという用語は一見取っつきにくいものの
メディアの特性を考えるうえで、わりと使える概念です。

まずソーシャルグラフ(Social Graph)のほうから。
ネット上にリアルな人間関係を構築するような関係のことでして、
Facebook、twitter、mixiあたりが代表的なものです。

一方でインタレストグラフ(Interest Graph)は、趣味や嗜好、
興味・関心、主義を共通項として繋がる仕組みのことで、
一人のユーザーを中心とした興味・関心の関係のことです。

価格ドットコムとか、クックパッド、食べログ、YouTubeやニコニコ動画、
ヤフー知恵袋なんかをイメージしてみてくださいね。
これらは興味・関心によるニーズがコア部分にあるものです。

それでここで何を言いたいかというと、ソーシャルグラフとインタレストグラフ
は従来は別々に語られることが多かったのですが、今はかなり混沌としていて
そこをじっくり観察するとオモシロイ現象が見えてくるということです。

例としてソーシャルグラフの代表例であるFacebookでは、「いいね!」という
自己確認的な意味合いの行動が積み重なって、それが結局は興味・関心なんかを
中心にしたインタレストグラフを作っているという意味になります。

Twitterでのリツイートも、その行為自体が関心を持っていることの意思表明であって
リアルタイム的にインタレストグラフを形成していってます。

こういう現象がどうなるかというと、もともとFacebookやTwitterで繋がっている
ソーシャルグラフの関係性がインタレストグラフを通して、影響力のある人が
どんどん目立ってくるということが起き始めます。

この後でメインディッシュのひとつとしてご紹介するPinterest(ピンタレスト)
このメディアはソーシャルグラフではなく、明確にインタレストグラフとして
定義できるわけですが、こういったメディアでは影響力のある人が登場しやすい
とずっと思っておりました。

調べてみると「Power Pinner」といって、画像キュレーターとして力を持ち始め、
pinしてもらうために企業からの提携オファーが来るくらいです。
日本での人気はイマイチでも、海外ではセレブなんかよりはるかに
力を持っているようです。
(なおピンタレストではpinとrepinという概念が存在します)

それではここあたりからが本題でして、
ピンタレストでの垂直統合化が実は「鬼」であるという解説に入ります。

Pinterest(ピンタレスト)はAmazon化する

Pinterestは2010年3月に発足しました。
日本と比べアメリカでは絶大な人気を誇るメディアでして
次の5つの点がPinterestの人気の理由のようです。

(1)画像による直感的なコミュニケーション⇒ 言語レスでいける!
(2)モノにフォーカスした興味・関心ベースのつながり ⇒インタレストグラフです。
(3)別に「人」とつながらなくても一人で楽しめる ⇒妙な強迫感なしに気が楽です
(4)必要以上に「自分」を表に出さなくても構わない ⇒これも楽ですね
(5)リアルタイム性が求められないので自分の好きなペースで参加 ⇒これも楽です。

そしてPinterestでは、他のユーザーに共有(RePin)された画像であっても
クリックするとその画像が掲載された元のリンク先に飛びます。

つまり単純に元のサイトへのアクセスが増える仕組みをもっています。
これによってPinterestからのアクセスが大幅に増えたというオンラインショップ
がどんどん増えてくるという、なかなかによくできたプラットフォームです。

この機能が洗練されているがゆえに、国内でこういったスタイルのメディアが
広がっていくと、既存の商品アフィリエイトサイトやドロップシッピングサイトなどは
どんどん置いてけぼりにされてしまうだろうと想像しています。

Pinterestでは楽天の資本参加も重なってきましたが、国内人気はイマイチのようですね。
現状女性ユーザがメインであることは疑いなく、しかもCrooz Blogを例にすると
このメインユーザである若年層女性ユーザーではありません。

アメリカにおけるPinterestの顧客はお金を持っている女性がターゲットです。
具体的には、35歳から45歳を中心にしたWASP
(ホワイトアングロサクソンプロテスタント)の女性だと言われています。
そうなのか、それだったらお金持ちだよね、というイメージが浮かんできます。

日本とアメリカの35歳~45歳の女性は、Pinterestの顧客層として
一律に見るにはかなり無理があると考えられます。

一番大きい違いは、そもそもこの年代層の就業率でしょう。
女性の社会進出を推し進めると言いながらも、
未だに日本の古い社会構造から脱皮できていないことも問題ですね。

とまぁ、人気絶大なPinterestですが、そもそもながらこのメディアは平たくいうと
「画像掲示板」サイトなのですね、ただの。

ですが、非言語的なビジュアルのSNS、ソーシャルグラフではなく強烈に
インタレストグラフを打ち出しているメディアです。
画像だけなので、言語や民族や国を超えて同じ趣味嗜好をもつ人たちが
ばんばんと集まるという構造になっています。

話が長くなって申し訳ありませんが、ここからなんですよ重要なのは。

Pinterestに「Buy」ボタン追加のインパクト

Pinterest buy

あなたもよく知っているあの「購入する」ボタンのことです。

なんじゃ、そりゃ!?
そんなのありふれててなんでもないじゃん、と思われるに違いありません。

それがどうした!?とお叱りを受けそうですが、そのもたらす意味がすごいんですよ!

このニュースは2015年2月12日に記事で、むこう3ヶ月か6ヶ月以内に
その『Buy』ボタン搭載されるだろうとの紹介があり、佐々木俊尚さんに教えて
もらったポイントもここなんですね。

Pinterest Is Working on Buy Button For E-Commerce Plan

それでも当然ながら、それがどうした!?ですよね。
そうでしょう、そうでしょうとも。

実は・・・

これこそが、Pinterestの垂直統合化なのです。

Pinterestでは、衣類、雑貨、靴とかさまざまな商品の画像が
共有されながら日々拡散しています。

ここに『Buy』ボタンをつけることで何を狙っているかというと
ピンタレストの外の世界に出なくても、その中で購入・決済が
完結できるという仕組みに変わるということです。

Amazonで普通にやっているように、クレジットカードの登録さえ
しておけば、「カートに入れる」⇒「購入する」がシームレスに
Amazonの内部でできるのと同じ仕掛けです。

Pinterestはその実現のために、「Stripe」という機能を搭載しようとしています。
「Stripe」は、WEBサイトに簡単に実装できる決済システムです。
Paypalよりも衝動買いには、より効果的なシステムと思います。
Gigazineの記事で紹介されています。

つまりPinterestの画面みて、その場で即決済完了という
超簡単ステップを実現しようとしています。

これ、どういうことかお分かりでしょうか?

つまりいかに人気があるとはいえ、
ただの画像掲示板共有サイトだったPinterestは、
『Buy』ボタンによってショッピングモールへ

大きく変身するという意味をもっています。

実は、この垂直統合化戦略は消費者行動をしっかり掴んでいます。

よく、衝動買いってありますよね?

その衝動買いですが、迷わせる時間を与えないほど効果的です。

考えさせたらあかんわけですよ、あれ欲しいと思ったらすぐに買えること、
そしてそこにややこしい決済手続きがあるとあかんというわけです。
これはあなたもすぐに納得できますよね?

Pinterestの場合、画像を見せてから「Buy」で決済完了までの
導線がめちゃめちゃ短い、ここが「鬼」なのです。

つまり・・・
最強の衝動買いサイトへ変身するかもしれない
可能性を秘めているということなんです。

トータルの販売力ではAmazonには遠く及ばずとも、
ことパッと衝動買いさせる魔力においてはピンタレストのほうが鬼である、
といったようなことも起こるかもしれません。

鬼、鬼と何度も言ってますが(笑)・・・まじにそう思います。

FacebookとかTwitterとかと全然違う要素がここにあります。
これらは全部、広告、プロモーションを中心としたビジネスモデルでできています。

『Buy』をくっつけたPinterestは、見た画像からいきなり購入へ結びつけるという
意味で、まるで違う新しいビジネスモデルの形態になるでしょう。

垂直統合されたプラットフォームへコンテンツを流す意識

まぁここまで、ぐだぐだと書いてまいりましたが・・・

ピンタレストの話で言わんとしたことは、SNSを中心としたプラットフォームと
関係させそれに向けて何かのコンテンツを作り配信していく場合には、
それぞれのプラットフォームの垂直統合の動きをみてそれに沿って流していく
といった意識をもたないとめちゃめちゃ効率悪くなりそうですよ、
ということでした。

・・・では、【前編】はここまでとさせていただきます。

コンテンツ戦略を考える話として、もうひとつの重大なWEB上の変化について
”コンテンツページをもたないWEBサイト”について【後編】でご案内します。

PinterestとNowThisからメディアの垂直統合化と最新のウェブトレンドを知ってコンテンツ戦略を考える【後編】